健康起因事故が注目されるようになったのは、日本航空羽田沖墜落事故です。アメリカ・スリーマイル島原発事故・アメリカのスペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故・アラスカ沖タンカー座礁事故は、社員の体調不良が原因で起きたといわれています。

健康起因事故の定義とは?

近年、業務上の運転中に持病のてんかんが発症したことによって引き起こされた交通事故が多数報告されています。最悪、本人や当事者が死亡に至るケースも増えています。
病気や体調不良によって起きる事故のことを「健康起因事故」といいます。持病がない人でも、通勤途上で倒れたり、ふらついて駅の階段やホームから転落したりする事故などが起きていることを踏まえると、健康に起因する事故は、運輸・交通業にかぎらず、あらゆる作業現場でいつ何が起きても不思議ではないと考えるべきです。

オリンピック再び… 時代的背景からみた健康起因事故

東京オリンピックの3年前、1961年に労働災害死亡事故件数はピークに達していました。現在、少子高齢化と雇用情勢悪化によって、高年齢労働者数が増えています。
現場にはケガをしやすく病気になりやすい労働者が増えているといえます。2020年に再び東京オリンピックの開催を控え、公共工事増加に伴う健康起因事故(重大な労働災害)が多数起こるのではと懸念されています。
日本では小さなケガを含めると、これまで多くの健康起因事故が起きているといえます。社員の体調不良が原因で事故が起きると会社の健康管理体制のあり方に責任が問われます。危険作業・公共的事業に携わる事業所は特に注意が必要です。
下村労働衛生コンサルタント事務所では、鉄道・バス・タクシーなど運輸・交通業の産業医経験を活かし、これからも、健康管理を通じ社員の安全をサポートしていきたいと考えています。
下村労働衛生コンサルタント事務所では下記相談事例などに対応しています。

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具体的に取り組むべきこととは?

健康起因事故を起こしやすい病気を知る

脳卒中・心筋梗塞・てんかん・パニック

国土交通省に報告された健康起因事故のうち、脳卒中や心筋梗塞などによる事故が約3 分の2 を占めています。
それは、意識を失い発生したと考えられています。パニックや発作は作業中や運転中に起きると、とても危険なのです。特に、てんかんは、通院治療や服薬を怠ることによって大事故を招きます。

睡眠障害も健康起因事故を招くおそれがあり注意!

毎年、非常に多くの「居眠り運転」による交通事故が発生していることを考慮すると、事故を起こさないために、しっかりと睡眠をとらせることが大事です。
睡眠不足が重大な労働災害事故を招くと考えるべきです。特に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)は事故につながりやすい疾患です。
この病気は、運輸・交通業で、さまざまな事故を起こしていることが、交通裁判などの記録で明らかとなっています。
SASは、適切に治療を行い、眠気を軽減させることで、事故の予防が可能です。簡単な質問票によるスクリーニング検査(エプワース眠気指数テストなど)はコストもほとんどかかりませんので、健康診断機関や産業医と相談のうえ、ぜひ実施してほしいところです。

健康診断とその結果の確認や事後フォロー

会社として、特に注意が必要な検査項目は、高血圧・血糖値・心電図です。これらの検査で異常ありとの結果が出た社員は、心臓病や脳卒中による発作のリスクが高いといえるからです。
また、視力・聴力低下は事故の原因になるため、眼科・耳鼻科にかかるような病気にも注意が必要となります。
事故を防ぐ意味から、上記の問題などを抱えた社員には、精密検査や治療を徹底して、体調を整えてもらう必要があります。

主治医に意見を聞く

健康起因事故のリスクが高い社員について、主治医・産業医に対し、その社員の危険作業従事の可否、従事させる場合の配慮事項などについてあらかじめ意見を求めておきます。
危険作業従事者に関しては、上司・運行管理者・安全担当者などが医療機関に同行して主治医・産業医に直接、意見を求めることを強くお勧めします。
適切な意見を求めるために、主治医・産業医には、出社時間・休憩時間・退社時間といった作業日程だけではなく、仕事がイメージできるよう、会社パンフレットや現場作業写真、使用車、作業機器、重量物運搬や高所作業の詳細まで説明をしておきます。
また、薬の副作用に注意が必要です。眠気や注意力が低下する薬を服用していないか、主治医や産業医に確認すべきです。別薬や夜間服用に替えたほうが適切です。
事故の原因になりやすい薬の代表的なものにはメンタルヘルス疾患に処方される精神薬や、糖尿病治療で処方される血糖降下剤やインスリンがあります。

慎重に慎重をかさねて、体調不良を甘く見ないで

普段は元気でも、急に体調が悪くなることは誰にでもあります。体調不良は、健康起因事故の大きな原因になります。そのため、業務開始前の体調確認や点呼が大事です。

  • 健康状態について気になることはないか
  • 発熱・動悸・息切れ・めまい・胸痛・下痢・眠気・疲労・二日酔いなどはないか
  • 作業や運転に悪影響を及ぼす薬を服用していないか(かぜや花粉症の薬など)
  • 常用薬の飲み忘れはないか?

を確認します。

体調不良は、声に出やすいといわれています。必ず至近距離で声をかけて、声のかすれなど具体的に確認すべきです。
そして、体調が優れないと判断した場合は、休養や医師に診てもらうように命じるか、デスクワークで様子を見るといった対応をします。また、代わりの作業者をあらかじめ決めておくことも、事故を防ぐ意味でとても大事です。
過重労働は、通勤・業務上の大きな事故の引き金になります。疲労の蓄積・睡眠不足を解消させる過重労働対策は、健康起因事故予防の大きな柱となります。

健康管理と連動した安全対策を

安全対策においては、不安全な行動や設備の問題に目を奪われがちですが、社員の持病や体調にも起因するという事実を認識しておくと、事故対策ができることもあると思います。
5S、ヒヤリ・ハット、KY、リスクアセスメントといった安全活動手法はたくさんありますが、それだけでは防げない事故もあるということは再認識してほしいところです。
危険職場を抱えた会社の安全管理者は、産業医、保健師、看護師、衛生管理者らと連携して健康管理に連動した安全対策を考えるべきです。