多くの職場で、うつ病などメンタルヘルスの不調を訴える社員が増えてきました。社員が体調を崩すと本人だけではなく周囲へも影響します。
職場のメンタルヘルスは、労災認定など法的責任問題とも密接しており、企業のリスクマネジメントの一環として多くの企業で認知されつつあります。
しかしながら、対策が立てられず実際にどのように取り組めば良いのか悩まれている企業は多いのではないでしょうか?

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このコラムでは、担当者の腕の見せどころになる「通院と休職」、「復職」の実務について、ご説明したいと思います。

下村労働衛生コンサルタント事務所では、事例のような問題に対して、2千件以上の相談経験を基に、担当の方と一緒に社員と会社にとって最も良い対応ができるように考えていきたいと思っております。

担当者の悩み スムーズに通院させたい・・・

メンタルヘルスが不調になると、欠勤が増え、たとえ出勤ができても、満足な仕事が望めない状態になります。この状況を放置すると、社員は精神的に疲弊し、メンタルヘルスを悪化させてしまうケースがあります。また、同じ職場の社員にも悪い影響を及ぼします。
改善の兆しがみられなければ、産業医に相談し、病院に連れて行く。主治医がいれば一歩踏み込んだ治療をしてもらうなど、仕事よりも通院に専念させる必要があります。

中途半端な就労を予防するためのチェックポイント

変形労働時間制・フレックスタイム制などはメンタル不調を招きやすい?

最近、多くの企業が採用している、フレックスタイム制・変形労働時間制・裁量労働制・みなし労働といった制度は、遅刻が把握しにくく、通院を勧めにくい働き方です。また、サービス残業・過重労働を放置していると、社員に「遅刻・早退・欠勤をするな」と注意しにくくなります。こうした働き方は、帰宅時間が遅くなることで、リフレッシュできなくなり、睡眠時間も取れないため、メンタルヘルス不調の原因になります。

時間に不誠実な会社ほどメンタルヘルス不調を訴える社員は多くなる

経営者は、遅刻・早退・欠勤を繰り返す社員の姿を見て「鏡に映った“サービス残業・過重労働を放置する、時間に不誠実な自分の姿”」と受け止めて考えなくてはなりません。会社が時間に誠実であれば、過重労働や遅刻・早退・欠勤はなくなり、社員のメンタルヘルスは改善がみられるはずです。時間に不誠実な会社は必ず“社員の中途半端な就労”という報いを受けます。中途半端な就労を続ける社員が後を絶たないと感じるようであれば、まずは、こうした時間に不誠実な働き方が横行していないかどうかセルフチェックをされてみてください。

遅刻はメンタルヘルス不調のシグナル、退社時間は守らせること

メンタルヘルス不調には「遅刻」が付きものです。社員が遅刻した日は、退社時間を遅らせたり、休日に出勤を命じたりと帳尻を合わせている職場も多いでしょう。こうした対処は、メンタルヘルス不調を助長します。たとえ、夕方に出社するような大きな遅刻でも「明日は遅刻しないよう定時で帰りなさい」と指導できる姿勢が大事です。たとえ地位の高い社員であっても、メンタルヘルス不調がみられたら、裁量労働制の対象から外し、定時出社・退社を原則とし、体調の回復を待ちます。帰宅時間が一定になれば、睡眠が取りやすく、遅刻が減る効果があります。

注意 管理職の自己判断は危険

メンタルヘルスマネジメントの知識がないまま、メンタルヘルス不調を訴えた部下を管理職の自己判断で出勤させているケースが多々ありますが、大変リスクが高いです。
特に人材不足の零細企業や、大企業でも地方の営業所などは、メンタルヘルス不調の社員の出勤に注意が必要です。残業や出張に制限を設けるなど配慮が必要か確認するため、主治医や産業医の診断書や意見書をもらうべきです。

休職に向けて

遅刻・早退・欠勤を繰り返し、改善の兆しがみられなければ、休職をさせるべきです。なぜなら、仕事をしながら精神疾患を治療することは簡単なことではないからです。
社員が休職を希望し、主治医が賛同している場合は、スムーズに休職になります。しかし問題なのは、社員が休職に応じない場合です。
このような場合は、社員を粘り強く説得するしかありません。その際、職場の同僚や家族、主治医とも連携して協力体制ができれば理想的です。

経済面の不安や心配のフォロー

なかには、給料がもらえないと勘違いして休職したくないと主張する社員もいるため、病気休暇や傷病手当金の仕組みを説明し、休職させるようにもっていきましょう。
休職期間は、主治医の指示を尊重します。2週間から1カ月程度の休職では、仕事のことを完全に忘れることができないため、不完全な治療になる場合があります。
また、こまめに休職期間を延長していくのも、社員・同僚・会社ともに多大なる精神的な負担につながるため、上手な休職のさせ方ではありません。少し長めに休職させると、社員は安心して療養に専念できます。仕事ができるようになるまで休養するわけですから、当初の休職期間の設定はあくまでも暫定です。会社側も治るまで出社させないという姿勢で、経過をみながら臨機応変に対応します。また、療養先については会社が介入すべきではありませんが、独り暮らしの社員は孤立しやすいので、家族に連絡し実家で休養させるようにアドバイスするやり方もあります。

休職中の対応

基本的な考え

休職期間中は、健康管理責任は職場ではなく、本人と家族にあります。あれこれ口出しするのは本人のためになりません。
自分の病気は自分で治すという気持ちを持たせることが復職に必要です。
休職中は、適当な間隔で家族に電話をし、様子を尋ね、社員の体調が良い日には、お見舞いに行きます。
そのときに給与明細、傷病手当金の書類、社内報などを届けます。お見舞いの目的は状況確認だけではなく、家族と連携を深めるためでもあります。

休職中の生活状況など定期報告は求めるようにする

休職をして、少し元気になると、休職中に旅行・ギャンブル・結婚などをして症状を悪化させてしまう人も少なくありません。療養に専念させるためにも、本人や家族から定期報告をきちんと求めることも必要です。

休職期間中の連絡窓口はひとつ、人事担当に任せる

メンタルヘルス不調の社員にとって産業医や人事担当者との面談は精神的な負担になるので、連絡手段などはメールや電話のみとし、本人や家族などの意見を尊重し、主治医や産業医の意見を踏まえてから面談すべきかどうか決めましょう。
また、会社の窓口はひとつにします。上司との人間関係で休職する社員もいるため、一般的に窓口は人事担当が無難です。

まとめ 就業規則に従い誠意をもって対応することが必要

メンタルヘルスケアは、本人の病状により臨機応変に対応することが求められますが、特別扱いは避けるべきです。メンタルヘルスマネジメントの実務の聖書となるのが就業規則です。
休職や復職についてルールを設け、誠意をもって対応するのが原則です。