最近、入社早々、精神的な理由で体調を崩す社員が増えています。
今年、顧問先の内定研修で「メンタル不全」となってしまった学生のフォローを引き受けましたが、入社式には出席できませんでした。
これからの時代、若いときからのメンタルヘルスマネジメントと健康教育の重要性を肌で感じました。
日本は、年功序列と終身雇用制が崩壊して、国際社会で生き残るための競争と格差が拡大しつつあります。
企業は、長時間・激務で働くことを人材に求めています。最近の短期集中型の就職活動では、大学で事前教育を受ける時間が十分とれず、内定が出たあとは暇になってしまいます。その結果、雇用のミスマッチなどが起きやすくなるという弊害があります。
こうした背景を踏まえると、企業は、新入社員のときから健康管理・教育を実施する必要があります。

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採用前の留意点

① 健康管理について意識が高い社員を採用担当者に

企業の健康管理は、採用面接から始まっていると考えるべきです。採用にあたっては、学歴・研究・コミュニュケーション能力・国際経験といったものだけではなく、ストレス耐性、健康管理、生活習慣、持病(既往歴)も参考にすべきです。
本当に健康な人材かどうか? を採用担当者が多角的な視点で、見極める必要があります。しかし、肝心のリクルーターが、自分の健康管理にいいかげんであれば、健康な人材を採用することはできません。健康管理について意識が高い社員を採用担当者に起用すべきです。

② 身元保証人の重要性

20代は、精神病の好発年齢といわれています。精神的な理由で体調を崩すと、本人だけでは正しい自己判断ができなくなってしまうこともあります。
迅速・的確に、通院や休職による療養をしてもらうためには、家族の協力は欠かせません。
両親はもちろん、近くにいる兄弟や親戚にも身元保証人になってもらえれば理想的です。必ず連絡がとれる緊急連絡先も複数、ヒヤリングしておきましょう。

③ 早期に徹底した職業教育(新人・内定研修)の実施

企業とは、利益を追求する極めて非民主的な社会集団です。企業がビジネスマンに求める資質は、協調性と強い精神力です。どんな人にも配慮でき、協調して仕事を行うことを求めています。
若手社員のメンタル不全を防ぐためには、できるだけ早くから、学生時代の考え方を改めさせ、社会人としての心構えを伝えるような内定研修が必要となります。
そこで、怒られたり、指示をされたり、評価されたりすることに慣れさせ、ストレス耐性を養います。プロ意識を植え付け、私生活のストレスを職場に持ち込まないよう教育することも必要です。
若手社員は、社会に出るまでは、他人から叱られたり、命令されたり、バカにされたりする経験が少ないため、パワハラ・セクハラ・モラハラ(人格否定)の被害を受けたとして精神を病んでしまうことがあります。管理職にはその事実を周知させ若手社員に対して慎重な言動をするように求めるべきです。

若手社員の健康管理4つのポイントとは?

ポイント① 生活習慣の改善

ビジネスマンとして、種々の変化に早く慣れ、健康を維持させるためには、ルーズだった学生時代の生活習慣を修正させます。つまり、規則正しい食事、睡眠、運動などの生活リズムをつくらせることです。
睡眠不足や不眠は、メンタル不全の引き金になります。睡眠をしっかりとることがとても大切です。残業や夜遊びを控え、夜型の生活リズムを朝型に変える教育をします。また、企業も新入社員が仕事や社会に慣れ、ペースをつかむまで、残業は制限するべきです。
平日、仕事に追われた反動で、週末、疲れた体で遊んで無理をしてしまう人も多いです。若さゆえですが、リズムをつかむまで、週1日は必ず体を休めるよう指導をしましょう。

ポイント② 休日の起床就寝

日曜日に寝だめをして朝寝坊をすると、その日の夜に眠れなくなって、仕事が始まる月曜日には、睡眠不足に陥ってしまうという悪循環になり逆効果です。日曜日も同じ時間に起床するべきです。
その代わり、疲れが溜まっているのであれば、休日に20~30分程度「昼寝」をすると疲労解消効果があるので、昼寝はお勧めです。

ポイント③ 食生活は健康管理の基本

食生活が乱れ、肥満体質になって、糖尿病・肝臓病・高脂血症になる若手社員が増えています。食事も、体調を管理するうえで重要なポイントです。朝昼夕食べる、食べ過ぎない、夕食を遅く取らない、体重を毎日計る。などといった学生時代の体重をキープするような教育を心がけます。
喫煙は、ビジネスマンにとって、大きなハンディです。喫煙期間が短いほど禁煙は容易といわれているので、若いうちに禁煙教育もぜひ実施すべきです。

ポイント④ ベテラン社員のフォロー

入社前の期待と入社後直面した実際とのギャップ、仕事へのプレッシャー、先輩社員や顧客とのコミュニュケーションなど、入社間もない若手社員は、大きなストレスを感じやすい状況にあります。
ベテラン社員が悩みを聞き出して相談に乗るなどすることは、メンタルヘルス対策の上でも重要です。

ポイント⑤雇入時健康診断

雇入時健康診断後のフォローは、とても重要なポイントといえます。現在の法定検診項目では、血液検査や心電図検査については40歳未満(35歳を除く)の者について、医師の判断に基づき省略が認められています。
これを怠ると、心臓病や糖尿病などの病気の早期発見・治療のタイミングを逸することにもなります。次期の法定検診である35歳まで発見が遅れることになるからです。
異常があったら、再検査や精密検査を受けさせて問題がないことを確認してから、本格的に仕事を任せるべきです。持病がある場合、主治医・産業医の意見を基に配属先を決めてください。
危険作業や運転に従事している、長時間労働をしている社員は、若くても検診項目を省略することは大きなリスクなので項目を省略すべきではありません。

採用後注意すべきこと

① 若い社員をじっくり育てる発想がポイント

大学を卒業し、23才から働き始めるとすれば、65才になるまで、42年働くことになります。職業生活は、まさにマラソンと同じような長丁場です。最初に100m走のようにダッシュすれば、長続きしません。焦りは禁物なのです。
我が国では、学校教育を終えた若い人材を、企業内で教育し職業能力を身につけさせるシステムが機能していました。
しかし、長引く不況で、余裕を失った企業が“即戦力”と称して若手社員を使い捨てる傾向が強くなってきました。
管理職は、若手社員に健康管理と無理のない仕事のペース配分を季節毎・月・週単位で腰を据えて教えることも必要です。

② 社会の連携が若手社員を守る

就職は、学校保健から産業保健への転換期です。
最近増えている、若手社員のメンタル不全は、学校と企業の連携が不十分なことによって起きていると考えます。
文部科学省と厚生労働省の連携や、産業保健に理解のある学校医、学校保健の知識のある産業医の育成も必要です。
新入社員の健康管理のポイントは、ゆとりのある学校環境と、乏しい企業環境との格差を、できるだけ早期に埋めて、上手く職業生活のスタートラインに立たせることです。

③ 新入社員と家族に信頼されるような健康的な職場づくりを

この企業に入って良かったと新入社員や家族に感じてもらえるような、健康的な職場づくりを産業医としてせつに願うばかりです。